一般社団法人 日本医療協会
Japan Medical Care Association

子供が突然吐いたときはどうすれば?

お子さんが突然吐くと、保護者の方はとてもびっくりしてしまいます。吐くという行為は医学的には嘔吐といいます。

お子さんが吐いたときに、しばらく自宅で様子をみてよいのか、それともすぐに病院に連れて行くべきか、判断に迷うことがあると思います。

特に乳児では嘔吐なのか、それとも単なる逆流なのかを見極める必要があります。嘔吐は胃の内容物を腹筋などの収縮力を使って押し出すもので、口や鼻の穴から噴水のように勢いよく出ます。一方、単なる逆流の場合は下部食道括約筋の機能異常で胃の内容物が逆流し、口からだらだらと出てきます。主に乳児に多くみられます。決して噴水のようには出ないので見分けやすいと思います。

嘔吐では緊急に治療が必要な病気の場合があります。

ここでは小児科外来で遭遇することがある以下の病気について見ていきましょう。

腹痛や下痢を伴うもの

嘔吐に腹痛や下痢を伴う場合で多いのは感染性胃腸炎です。そのほかには急性虫垂炎やイレウス、腸重積、下痢を起こす食物アレルギーなどがあります。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌が胃や腸に感染することにより引き起こされる病気です。

ウイルス性胃腸炎は11月から3月にかけて発生するので、冬季嘔吐下痢症とも呼ばれています。流行することが多いので注意が必要です。ノロウイルスとロタウイルスによるものがほとんどです。

一方、細菌性胃腸炎は基本的には食事で起こる食中毒です。夏場に多く、同じ食事を食べた人が集団で同時に発生します。

ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎について詳しく見ていきます。

ウイルス性胃腸炎(冬季嘔吐下痢症)

突然の嘔吐や下痢で始まり、毎年11月から3月の冬場に多く発生します。嘔吐と下痢の回数が非常に多いのが特徴で、すぐに脱水状態に陥ります。

1.原因

原因になるのは主にノロウイルスとロタウイルスです。

①ノロウイルス

ノロウイルスの流行時期は11月から2月あたりで、潜伏期間は2日前後です。幼児から成人まで幅広く感染します。

カキなどの二枚貝を食べて感染するほかに、感染した患者の便や嘔吐物、そしてこの便や嘔吐物が乾燥して舞い上がった粉塵からも感染を起こします。非常に感染力の強いウイルスです。

ノロウイルスには遺伝子構造の違う多くの種類があります。十二指腸から小腸上部でウイルスが増殖するのが特徴です。

予防ワクチンはありません。

②ロタウイルス

ロタウイルスの流行時期は1月から3月あたりで、潜伏期間は2日前後です。乳幼児の感染が主なので注意が必要です。

感染経路は接触感染、特に糞口感染です。

乳幼児がロタウイルスに感染すると重篤化する危険性があります。地域差はありますが、毎年世界で数十万人が亡くなっています。

近年はロタウイルスワクチンが普及してきています。

2.症状

ノロウイルス感染症とロタウイルス感染症では若干症状の違いがあります。便が白ければロタウイルスの可能性が高くなります。

突然の嘔吐や下痢で始まり、しばしば発熱を伴い、脱水症状を引き起こします。下痢は少し遅れて出ることが多く、回数が増えるにつれ徐々に水様便になります。

ノロウイルスとロタウイルスを比較すると、より症状が強いのは乳幼児がかかりやすいロタウイルスです。ロタウイルスワクチンを積極的に接種しましょう。

自宅でできる脱水症状の見方

体重減少、皮膚のツルゴールの低下(皮膚の張りがなくなること)、お口の乾燥具合を見てください。なお、脱水になっていておしっこが出ない場合は緊急事態です。すぐに小児科を受診しましょう。

3.治療

ノロウイルスとロタウイルスには特効薬がないため、基本的には対症療法を行います。食事制限による胃腸への負担の軽減と、失われた水分の補給が中心になります。

なお、下痢が激しいからといって下痢止めを使用するのは推奨できません。なぜなら、体は自然な防御反応としてウイルスを排出しようと頑張っているので、それを止めると逆に治癒が遅れてしまいます。

嘔吐と下痢がみられた場合はお近くの小児科を受診してください。

4.予防

①ノロウイルス

ノロウイルスにはワクチンはありません。手洗いが最も大切です。

カキなどの二枚貝を調理する際は、しっかりと中心部まで加熱しましょう。

ノロウイルスにはアルコールが効きません。使った調理器具や汚染された物は、次亜塩素酸ナトリウムか熱湯(85℃以上で1分以上)で消毒してください。

②ロタウイルス

ロタウイルスワクチンは任意接種です。注射ではなく、経口投与、つまり口から接種します。ちなみに生ワクチンです。

単価ワクチンでも5価ワクチンでも大きな違いはありません。かかりつけの小児科で受けましょう。

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細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎は基本的には食事で起こる食中毒です。夏場に多く、食品が十分に加熱されていない場合や、料理人の手や調理器具が汚染されていた場合などに起こります。

細菌が腸粘膜に侵入し増殖すると、細菌の出す毒素により粘膜が障害を受けて発症します。同じ食事をした集団が同時に感染することがあるので注意が必要です。

細菌性胃腸炎の原因になるのは、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオなどです。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.サルモネラ

サルモネラは腸内細菌科に属すグラム陰性嫌気性杆菌です。主に人間、動物の消化管にいる腸内細菌ですが、なかには人間に対して病原性を持つものがあります。

人間に対して病原性を持つサルモネラは大きく2つに分類でき、一つは感染症法で3類に指定されている腸チフス・パラチフス、もう一つは食中毒を引き起こすサルモネラです。一般にサルモネラというときは後者の食中毒を起こす細菌のことを指します。鶏肉や卵で感染が起こりやすいといわれています。

①症状

8~48時間の潜伏期間を経て発症します。

嘔気や嘔吐で始まり、その後腹痛、下痢を引き起こします。下痢は非常に頻回で、脱水を起こしやすいので注意が必要です。ときに血便になります。

また38℃以上の高熱を呈すこともあります。

②治療

基本的には対症療法を行います。

抗生剤は軽症例ではあまり使用しませんが、重症例では使用します。

サルモネラに有効な抗生剤はアンピシリン、ホスホマイシン、ニューキノロン系です。

下痢止めは使用しません。下痢は体の防御反応の一つで毒素を体外へ排出する手段なので、下痢止めを使用すると逆に症状が長引いてしまいます。

③予防

次のことに気をつけてください。

生肉は他の食品に触れないようにしましょう。
生肉に触った後は必ず手を洗いましょう。
肉は加熱調理して食べましょう。
卵は冷蔵庫で保存し、早めに食べましょう。

2.カンピロバクター

カンピロバクターはもともと動物の腸炎や流産を引き起こす細菌として有名でした。カンピロバクターにはたくさんの種類があり、実はほとんどの動物が保菌しています。

人間の下痢から検出されるのはカンピロバクター・ジェジュニがほとんどです。鶏肉、生レバーなどで感染が起こりやすいといわれています。

①症状

2~5日の潜伏期間を経て発症します。潜伏期間が一般の食中毒に比べて長いのが特徴です。そのため食べたものとの因果関係がはっきりしないことがあります。

突然の腹痛、下痢で発症し、発熱と悪寒、倦怠感を伴います。下痢は水様便が最も多く、血便を呈することもあります。

また、まれですが感染から数週間後にギランバレー症候群を発症することがあるので注意が必要です。

②治療

基本的には自然治癒するので対症療法を行います。

重篤な場合や敗血症になった場合にはマクロライド系抗生剤を使用します。なお、セフェム系抗生剤には自然耐性があるので注意が必要です。ニューキノロン系に対する耐性化も問題となっています。

下痢止めは使用しません。下痢は体の防御反応の一つで毒素を体外へ排出する手段なので、下痢止めを使用すると逆に症状が長引いてしまいます。

③予防

次のことに気をつけてください。

カンピロバクターは乾燥に非常に弱いので、調理器具などはしっかりと乾燥させましょう。
生肉は他の食品に触れないようにしましょう。
生肉に触った後は必ず手を洗いましょう。
肉は加熱調理して食べましょう。

3.病原性大腸菌

大腸菌は基本的には無害ですが、なかには人間に対して病原性を持つものがあり、これを病原性大腸菌と呼びます。ただし、赤痢を起こす病原性大腸菌だけは赤痢菌と呼ばれ区別されています。

病原性大腸菌の中でもO157、O111などの腸管出血性大腸菌はベロ毒素を出すので重症化します。合併症の中で大事なのは溶血性尿毒症症候群です。命にかかわる病気なので要注意です。ここでは腸管出血性大腸菌についてみていきます。

①症状

5日前後の潜伏期間を経て発症します。突然の腹痛、下痢が特徴です。

発熱は37℃台で、ほとんどの場合高熱にはなりません。

腹痛は非常に激しく、水様便を頻回に繰り返したあとに、約90%の症例で血便を呈するようになります。血便は初めは少量ですが、徐々に増加し、典型的なものではほぼ血液が出るような状態になります。

発症後数日から2週間以内に溶血性尿毒症症候群や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあるので十分に気を付けてください。

②治療

基本的には対症療法を行います。溶血性尿毒症症候群という怖い合併症を誘発する危険があるため、抗生剤の投与は推奨されていません。

下痢止めは使用しません。下痢は体の防御反応の一つで毒素を体外へ排出する手段なので、下痢止めを使用すると逆に症状が長引いてしまいます。

重症化すると命に関わるので、突然の腹痛と下痢が起こり、血便が多量に出るときはできるだけ早く病院に行きましょう。

③予防

次のことに気をつけてください。

生鮮食品は新鮮なものを購入し、早めに食べましょう。
生肉や魚、卵に触った後は手を洗いましょう。
適切に加熱調理してから食べましょう。
調理前後の食品を室温で長く放置しないようにしましょう。

4.黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は人間の皮膚や鼻腔内に常在している菌です。常在している場所では影響を与えませんが、食品中で増殖するときにエンテロトキシンという毒素を生じるため食中毒を起こすことがあります。

不衛生な状態で加工されたおにぎりによるものが最も多く、仕出し弁当やケーキなどが原因になることもあります。

①症状

3時間前後の潜伏期間を経て発症します。

激しい嘔気・嘔吐や差し込むような腹痛、下痢が主な症状です。

エンテロトキシンの量によって症状の重症度が変わってきます。重症例では入院が必要になりますが、一般に予後は良好です。

②治療

エンテロトキシンに対する特効薬はないので、基本的には対症療法を行います。

下痢止めは使用しません。下痢は体の防御反応の一つで毒素を体外へ排出する手段なので、下痢止めを使用すると逆に症状が長引いてしまいます。

③予防

食品の冷蔵保存、調理前後の手洗いが大切です。調理前後の食品を室温で長く放置しないようにしましょう。

手指に傷や化膿している部位がある人は、絶対に素手で食品を扱ってはいけません。

5.腸炎ビブリオ

腸炎ビブリオはビブリオ属に属す好塩性グラム陰性桿菌で、主に海水中に存在しています。腸炎ビブリオは溶血毒という毒素を作り出すため食中毒の原因になります。溶血毒には耐熱性溶血毒と耐熱性毒素関連溶血毒があります。

腸炎ビブリオに感染した魚介類を加熱せずに食べることで感染し発症します。感染部位は小腸がメインです。

①症状

腸炎ビブリオは6時間から12時間の潜伏期間を経て発症します。

激しい腹痛を伴う下痢が生じ、ときに血便を呈します。

通常は数日で回復しますが、免疫不全の方などでは重症化するので注意が必要です。

②治療

腸炎ビブリオは基本的には数日で自然に治癒するので、対症療法を行います。

なお、抗生剤を使う場合はニューキノロン系やホスホマイシンを使います。

下痢止めは使用しません。下痢は体の防御反応の一つで毒素を体外へ排出する手段なので、下痢止めを使用すると逆に症状が長引いてしまいます。

③予防

魚介類の冷蔵保存と、調理前後の手洗いが大切です

十分な加熱により腸炎ビブリオは死滅します。適切に加熱調理してから食べましょう。

生食する場合は新鮮な魚介類を購入し、冷蔵保存して速やかに食べましょう。

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下痢を起こす食物アレルギー

食物アレルギーとは、原因となる食べ物を摂取した後に免疫学的な機序のもとで消化器、呼吸器、皮膚、粘膜などにさまざまな症状を引き起こすものをいいます。

下痢を生じる食物アレルギーは、臨床的には主に新生児や乳児に起こる新生児・乳児消化管アレルギーと、乳児期以降に起こる即時型の食物アレルギーです。

1.原因

新生児・乳児消化管アレルギー:牛乳が主な原因です。離乳食開始後に大豆や米などが原因になることもあります。

即時型:さまざまな食べ物で引き起こされます。多いのは鶏卵、牛乳、小麦です。

2.症状

新生児・乳児消化管アレルギー:多くは牛乳由来ミルク(普通ミルク)を開始して7日以内に嘔吐や下痢などの症状を呈します。ときに発熱や発疹も生じるので注意が必要です。ただし、多くのお子さんは1~3歳までに改善し、起こらなくなります。

即時型:蕁麻疹などの皮膚症状に加えて、嘔吐や下痢などの消化器症状、咳や呼吸困難などの呼吸器症状、血圧低下やショックなどの全身症状を引き起こします。

3.治療

即時型では急速に症状が進行し、緊急に(場合によっては救急車で)受診が必要になることがあります。

新生児・乳児消化管アレルギー、即時型ともに根本的な治療法はありません。除去食にしながら、耐性を獲得するのを待つことになります。新生児期に起こる新生児・乳児消化管アレルギーでは母乳(ときにお母さんの牛乳除去が必要)や特殊ミルクを用います。

除去食を続けていると必要な栄養が足りなくなるので、医師や栄養士と一緒に栄養管理に努めましょう。

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急性虫垂炎

急性虫垂炎は一般には「盲腸」と呼ばれています。特に小中学生に多い病気です。乳児期では非常にまれですが、幼児期以降はしばしばみられます。

乳幼児の虫垂炎は穿孔例が多く、重症化しやすいので注意が必要です。症状を訴えることができないため発見が遅れてしまいがちです。

1.原因

虫垂は大腸にぶら下がっているひものような構造をしているので、便や異物が入り込んでしまうことがあります。そして、運悪く虫垂の入り口が詰まって閉塞し、細菌感染が起きた場合に急性虫垂炎を発症します。

2.症状

虫垂炎では発熱、嘔気、腹痛がみられます。

まずは気持ち悪さと吐き気で始まり、みぞおちに何となく痛みを感じます。これは虫垂に便や異物が詰まり、虫垂の内圧が上昇することによって生じる内臓痛といわれています。下痢や排尿障害が生じることもあります。

進行してくると持続性のある激烈な痛みに変わります。痛みは徐々にお腹の右下に集中してきます。

さらに進行すると虫垂に穴が開き、便や異物が腸の周りに出てしまい腹膜炎を併発します。腹膜炎になると命に関わることもあるので、早期に発見し治療を開始することが大切です。

虫垂炎には特徴的な所見があり、医師が必ず診るポイントの一つです。

マックバーニー圧痛点:マックバーニー医師が見つけたことからこの名前が付きました。

場所はおへそと右上前腸骨棘(腰の横にある出っ張った骨)を結んで、おへそから3分の2のところです。ここが虫垂のある位置です。虫垂炎ではこの部分に痛みや圧痛がみられます。

また、このマックバーニー圧痛点を手で軽く押したときに、押したときよりも離したときに痛みが強くなる場合は、腹膜炎を起こしていることが強く疑われます。

3.治療

虫垂は、以前は生理機能を持たない無用の長物とされ、お腹の手術の際には虫垂炎の予防目的に異常がなくても切除されていました。しかし最近では、虫垂はリンパ機能を持ち、腸の免疫の一部を担っているのではないかという説が有力で、虫垂炎になった場合でもなるべく切除せず温存する方針になっています。ただし、虫垂を切除しなければならない場合も多くあります。

保存的治療

血液検査で炎症所見がそれほど強くない場合(発症早期のもの)は抗生剤投与と絶食による保存的治療が行われます。いわゆる「薬で散らす」という治療です。

虫垂切除術

虫垂はなるべく温存したいものの、状態によってはそうもいきません。虫垂炎が進行している場合や腹膜炎を併発している場合には虫垂切除術が行われます。

また病状によっては先に抗生剤治療を行い、その後に手術を行うこともあります。

腹膜炎は命に関わる疾患です。盲腸を侮ってはいけません。腹痛が持続する場合は早めに小児科や内科を受診してください。

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イレウス

イレウスは機械性イレウスと機能性イレウスに分けられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.機械性イレウス

機械性イレウスには閉塞性イレウスと絞扼性イレウスがあります。

①閉塞性イレウス

ア.原因

クローン病、手術の既往などによる炎症で腸管が癒着・閉塞したり、異物や腫瘍により腸管が閉塞したりすることで起こります。

イ.症状

間欠的な気持ち悪さや吐き気などで始まり、腹痛が起こります。便秘になり、お腹が膨れてくることもあります。

ウ.治療

閉塞性イレウスのほとんどは内科的治療でよくなります。

イレウス管を挿入して減圧を図り、抗生剤の投与を行います。また輸液をすることも大切です。

ただし、長期間の内科的治療で軽快しない場合は、腫瘍が原因になっている可能性があります。その場合は外科的な治療も考慮しなければいけません。

②絞扼性イレウス

ア.原因

絞扼性イレウスは腸重積やヘルニアの嵌頓で起こることが多いといわれています。

イ.症状

絞扼性イレウスでは急激な嘔吐、腹痛が生じます。消化管の血管が閉塞して壊死しかけているので、緊急な治療が必要になります。

ウ.治療

多くの場合、腸管が壊死して腹膜炎を併発しているので緊急手術の適応になります。

お子さんに急激な嘔吐、腹痛があった場合にはすぐに小児科を受診しましょう。場合によっては大学病院などの専門機関に紹介になります。

2.機能性イレウス

機能性イレウスは腹部の手術後や腹膜炎などで起こることが多く、できるだけ早期の治療が必要になります。

ア.原因

機能性イレウスの原因としては腹部の手術、虫垂炎や消化管穿孔による腹膜炎、外傷による腹腔内出血などが挙げられます。

イ.症状

嘔気や嘔吐、便秘、お腹の張りが基本的な症状です。腹膜炎を伴う場合は持続的な激しい腹痛を生じます。

ウ.治療

腹部の手術後の機能性イレウスの多くは内科的治療でよくなります。

腹膜炎による場合は緊急な治療が必要です。

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腸重積

腸重積は発見が遅れると腸管が壊死してしまい、最終的には命に関わる非常に怖い病気です。好発年齢は生後6か月から1歳代ですが、ときに小学校入学前頃のお子さんにも起こります。

特徴的な症状は間欠的な強い腹痛です。乳児の場合は腹痛を訴えることができないため、時間の間隔を置いて泣きわめきます。またイチゴジャムのような血便が出ることも有名です。

1.原因

現在のところ腸重積の原因は不明ですが、多くの場合で発症前に何らかの感染症に罹患しており、腸間膜リンパ節の腫脹が関与しているともいわれています。またメッケル憩室など腸管の構造が関係している場合もあります。

2.症状

腸重積の症状は、間欠的な腹痛(乳児では間欠的な泣きわめき)、嘔吐、血便です。

乳児は症状を訴えることができず泣くことしかできないので、発見が遅れる場合があります。間欠的に痛みが起こるので、痛みがない間は笑っていることもあります。時間が経過すると泣く元気がなくなり、うとうととして傾眠傾向になります。

血便はイチゴゼリー状の便が特徴的ですが、血便になる前に下痢になったり、血便自体が出なかったりすることもあるので要注意です。

3.治療

時間が経つと腸管が壊死して命に関わることもあるので、緊急な治療が必要です。

治療としては高圧浣腸または手術が行われます。しばしば再発がみられるので注意が必要です。

お子さんの泣き方が明らかにおかしく、普段と様子が違うようであれば、できるだけ早く小児科を受診しましょう。場合によっては大学病院などの専門機関に紹介になります。

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頭痛を伴うもの

嘔吐に頭痛を伴う場合は髄膜炎や頭蓋内出血などが考えられます。

髄膜炎

髄膜炎は早期発見、早期治療が重要なので、保護者の方は子供の髄膜炎について知っておくとよいと思います。

人間の脳と脊髄を覆う膜を髄膜といいます。髄膜は3層から成り、体の外側から順に硬膜、くも膜、軟膜で構成されています。この髄膜に炎症が起きた状態を髄膜炎といいます。

髄膜炎は原因により細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎に大きく分けられます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

細菌性髄膜炎

致死率は約3~4%で、約15%に後遺症が残る怖い病気です。救急疾患であり、初期治療が非常に重要です。ご家庭で早期発見できれば重篤な状態にならない可能性が広がります。

1.原因

細菌感染が原因で起こります。インフルエンザ菌、大腸菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、B群レンサ球菌、髄膜炎菌、リステリア菌などが代表的な原因菌です。

最近はワクチンの接種により、インフルエンザ菌や肺炎球菌による髄膜炎が大幅に減少しています。

生後1ヶ月未満:B群レンサ球菌、大腸菌が多い

生後1ヶ月から3ヶ月:B群レンサ球菌が多い

生後4ヶ月から5歳:インフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、リステリア菌が多い

6歳以上:ほとんどが肺炎球菌だが、インフルエンザ菌も少なくない

2.症状

細菌性髄膜炎の典型的な3徴は発熱、項部硬直、意識障害です。これに頭痛を加えて4徴と呼ぶこともあります。成人では50%前後で3徴を認め、また非常に高い確率で4徴のうち2つの症状を呈するといわれています。そのため、3徴や4徴がそろっていなくても、2つ以上の症状がある場合には細菌性髄膜炎を積極的に疑う必要があります。特に免疫機能が低下している場合にはなおさらです。

上記の症状以外では、けいれんや嘔吐、活動性の低下、脳神経麻痺、聴覚障害、皮疹なども起こることがあります。また、乳児までのお子さんでは大泉門膨隆は重要な所見です。

なお、小児では年齢が低いほど症状は軽微であり、成人と比べ典型的な症状や徴候が出にくいため発見が遅れてしまう場合があります。

3.治療

細菌性髄膜炎では、基本的に入院の上で抗生剤治療を行います。

発症から治療開始までの時間が非常に重要で、予後にかなりの影響を与えることが知られています。発熱と頭痛、嘔吐が見られた場合にはすぐに小児科を受診しましょう。場合によっては大学病院などの専門機関に紹介になります。

無菌性髄膜炎

無菌性髄膜炎は、名前の通り髄液を培養しても細菌や真菌が検出されないものを指し、そのほとんどがウイルス性と考えられています。

1.原因

無菌性髄膜炎の原因のほとんどはウイルスです。小児ではエンテロウイルスとムンプスウイルスによるものが多くみられます。

まれに医薬品やワクチンで起こることがあります。ワクチンではおたふくかぜワクチンでの発症が多いので、保護者の方は注意してください。

2.症状

高熱、頭痛、嘔気・嘔吐の3徴候が見られます。項部硬直などの髄膜刺激症状も認めます。

3.治療

通常入院の上で対症療法を行いますが、一般的に予後は良好です。

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頭蓋内出血

頭の骨(頭蓋骨)内部の出血を頭蓋内出血といいます。お子さんが頭を強くぶつけたときに最も心配なのがこの頭蓋内出血です。命に関わることもあるので、緊急な治療が必要です。

1.原因

外傷で衝撃が加わることにより、脳表面の血管が損傷を受けて出血することがあります。

そのほかに、動静脈奇形や動脈瘤などによるものや、血友病や白血病のような血液疾患、悪性腫瘍によるものもあります。

2.症状

頭を強くぶつけた後に次のような症状がある場合は頭蓋内出血を起こしている可能性があります。しばらくしてから症状が起こることもあるので要注意です。

意識がない、はっきりしない
けいれんしている
手足が動かない
ぐったりしている
繰り返し嘔吐する

3.治療

出血の状態に応じた治療が行われます。緊急手術が必要なこともあります。

頭蓋内出血は救急疾患です。頭をぶつけた後に様子がおかしいときはできるだけ早く小児科や脳外科を受診しましょう。場合によっては大学病院などの専門機関に紹介になります。

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咳を伴うもの

嘔吐に咳を伴う病気には気管支喘息や百日咳などがあります。

気管支喘息

気管支喘息は真夜中の小児科救急でよく遭遇する病気です。お子さんが苦しそうにぜいぜい息をして、息を吐くときにヒューヒュー音が聞こえるときには、まず気管支喘息の可能性を疑います。

命に関わることもある怖い病気です。

細菌性髄膜炎

致死率は約3~4%で、約15%に後遺症が残る怖い病気です。救急疾患であり、初期治療が非常に重要です。ご家庭で早期発見できれば重篤な状態にならない可能性が広がります。

1.原因

気管支喘息は遺伝的素因と環境因子が組み合わさって発症するといわれていますが、正確なところはまだわかっていません。

患者さんの気道粘膜から好酸球などの炎症細胞が検出されているため、アレルギーによる炎症や慢性の気道炎症など、何らかの炎症が原因となって発症すると考えられています。

気管支喘息はアトピー型と非アトピー型に大きく分けられます。

両方に共通するのは気道に慢性炎症が起こっていること、そして気道の過敏性が亢進していることです。

アトピー型:アトピー素因とはハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こすもの)に対してIgEと呼ばれるアレルギー抗体を産生しやすい体質のことをいいます。

アレルギー反応により肥満細胞からさまざまな化学伝達物質が放出され、気管支に炎症が起こります。同時に気管支平滑筋が過敏に反応することで喘息が引き起こされます。

非アトピー型:アトピー型と違い、アレルギー抗体が関与しないものすべてを指します。ストレスや気温の寒暖差などが喘息発作の原因として挙げられます。

2.症状

発作性に呼吸困難と咳、喘鳴を生じます。喘息発作は夜間から明け方に多くみられるようです。

初期ではのどに違和感があり、徐々に息苦しさが出てきます。典型的な症状は呼気の延長と呼気時の喘鳴です。息を吐くときにヒューヒュー音がします。喘息が進行してくると、呼気時だけでなく吸気時にも喘鳴が聞こえるようになります。重症化すると通常の呼吸ができずに陥没呼吸となり、チアノーゼを起こします。

治療を始めないと気管支平滑筋の肥厚と気道のむくみがさらに悪化し、まれではありますが粘液栓により窒息に陥ることもあります。

3.治療

狭くなった気道を広げることを目的に、まずはβ2刺激薬の吸入を行います。吸入を30分おきに繰り返しても効果が不十分なときはステロイド治療を行います。

自宅ではお子さんの手の届くところにβ2刺激薬の吸入器を置いておきましょう。吸入で改善しない場合はできるだけ早く小児科を受診してください。重症で呼吸困難を起こした症例では気管挿管が必要になることもあります。

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百日咳

百日咳は咳発作を特徴とする急性気道感染症です。あらゆる世代で発症しますが、特に乳児に多くみられます。

百日咳は母親から十分な免疫がもらえないため、乳児の早い時期から感染してしまう可能性があります。6か月未満の乳児がかかると非常に重篤になり、命に関わることもある怖い病気です。

学校保健安全法では第2種に定められており、特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗生剤による治療が終了するまで登校禁止です。

1.原因

百日咳の原因は百日咳菌です。百日咳菌はグラム陰性の桿菌で、偏性好気性で鞭毛がなく運動しない細菌です。

百日咳の発症機序は現在でも不明です。諸説ありますが、百日咳菌が持つ毒素など、さまざまな因子が発症に関わっているという説が有力です。

2.感染経路

百日咳の感染経路は飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染:くしゃみや咳によって口から飛び出す飛沫には細菌が混入しています。このウイルス付きの飛沫が他人の口や鼻の粘膜に到達することで感染が成立します。

接触感染:感染者との直接的な接触や、細菌の付着した物(手すりやドアノブ、ボタン・スイッチなど)を介しての接触により感染が起こります。

3.症状

通常1週間の潜伏期間を経て発症します。かぜのような症状に続いて、顔を真っ赤にして咳き込むようになるのが特徴です。発熱はほとんどみられません。

百日咳の臨床症状はカタル期、痙咳期、回復期の大きく3つに分けられ、それぞれが2週間近く続きます。

カタル期:かぜの症状が起こり、咳が徐々に激しくなります。咳は通常のかぜでも見られる症状なので、間違えやすく注意が必要です。

痙咳期:だんだんと息を詰めるような咳になっていきます。短い咳を連続で起こし、その後に息を吸うときに笛のようなヒューという吸気音が出ます。このような咳発作を繰り返すことが特徴で、この繰り返しをレプリーゼといいます。レプリーゼは夜間に多く見られます。

乳幼児ではこの典型的な咳が見られないことも多く、単に息をしない無呼吸発作に陥りやすいので要注意です。また、肺炎や脳炎などの合併症が起こることもあります。

回復期:発作性の咳は徐々になくなっていきます。ここまで来ると、あとは自然に軽快していきます。ただし、忘れた頃に再度発作性の咳が出ることがあるので注意が必要です。

基本的には3か月くらいで治癒します。

かぜを引いて咳が長引いたり、発作性の咳が見られたりする場合は、早めに小児科を受診しましょう。

4.治療

百日咳菌に対しては、基本的にはマクロライド系の抗生剤を使用します。特に初期のカタル期に服用すると効果的です。

痙咳期に入ってからの抗生剤治療は、症状の改善効果は低いものの、周囲への感染を防ぐために欠かせません。

痙咳期には、抗生剤のほかに対症療法として鎮咳去痰薬なども使用されます。重症例ではガンマグロブリン大量療法が行われることがあります。

5.予防

百日咳菌の予防にはワクチンが有効です。混合ワクチンです。

1968年から三種混合(DPT)ワクチンが使われてきましたが、2012年からは不活化ポリオを追加した四種混合ワクチン (DPT- IPV)が導入されています。計4回の接種が必要です。

ちなみに、DはDiphtheria toxinの頭文字でジフテリア毒素を意味します。Pは無菌性百日咳ワクチンを表すacellular pertussis vaccineの真ん中の文字から取っています。Tは破傷風菌を表す学名のClostridium tetaniの最後の文字を取っています。IPVとはInactivated poliovirus vaccineの略であり、不活化ポリオワクチンを意味します。

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